相続法が改正されました。
平成30年(2018年)7月6日、民法の中の「相続法」に大きな改正がありました。
以下では、簡単に改正の内容をお伝えします(それぞれの制度についての詳細は、改めて記事を書きたいと思っています)。
1 被相続人(亡くなった方)の配偶者の自宅居住権への配慮
これには、短期居住権と、より長期の居住権とが認められました。
(1)配偶者短期居住権
相続開始時に、配偶者が被相続人の建物に無償で住んでいた場合、その配偶者は次の期間、居住建物を無償で使用できます。
①配偶者が居住建物の遺産分割に関わるときは、居住建物の帰属が確定する日まで(ただし、最低6か月は保障されます)
②居住建物が第三者に遺贈されたときや配偶者が相続放棄をしたときは居住建物の所有者となった者から消滅請求を受けてから6か月
(2)配偶者居住権(より長期の居住権)
遺言や遺産分割などにより、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物において、終身または一定期間、配偶者に建物の使用を認めることができるようになります(配偶者居住権を取得させることが可能)。
2 配偶者への居住用不動産の遺贈・贈与の保護
20年以上結婚している夫婦間で、居住用不動産(土地建物)を遺贈・贈与した場合には、原則としてそれを特別受益として取り扱わないこととなります。
※ これまでは、居住用不動産の遺贈・贈与が特別受益となり、その価値分の遺産を配偶者が遺産分割の際に受け取れないことが多くありました。
3 相続された預貯金の仮払い制度
(1)預貯金に限って、仮払いの必要性(生活費、葬儀費用、借金返済など)が認められる場合には、他の共同相続人の利益を害しない範囲で、家庭裁判所が判断して仮払いが認められるようになります。
(2)預貯金の一定割合については、家庭裁判所の判断を経なくても金融機関の窓口で支払を受けられるようになります(残高の3分の1 ✖ 法定相続分)
※ これまでは、預貯金については遺産分割協議書などで相続人全員が分配に合意しないと、払戻しが受けられない扱いがされていました。
4 相続開始後の財産処分の調整
相続開始後(被相続人の死亡後)、共同相続人の1人が遺産を処分した場合、処分された遺産について処分していない相続人の同意をもって遺産分割の対象とすることが可能になりました。
※ これまでは、共同相続人の1人が遺産を処分した場合、遺産分割調停や審判ではなく通常の民事訴訟で争われていましたが、立証責任などの面で請求する側が不利だと言われていました。
5 自筆証書遺言の要件緩和
自筆証書遺言(公正証書ではなく自筆で遺言を作成)において、財産目録をパソコンで作成したり、財産について証拠資料(通帳コピーや不動産登記事項証明書など)を添付したりすることでも有効な遺言と扱われるようになりました。
※ これまでは、自筆証書遺言は目録も含めて全て自筆で作成する必要がありました。
6 遺留分制度の見直し
(1)遺留分減殺請求権から生じる権利を金銭債権としました(○○円を請求する権利)
※ これまでは、遺留分減殺請求によって遺産の不動産が請求した人と請求された人との共有になるなどの扱いがとられており、売却などに不便な場合がありました。
(2)遺留分減殺請求を受けた人(受遺者・受贈者)がお金をすぐに準備できない場合、そうした人の請求によって、裁判所が、支払に期限を付けることができるようになります。
7 相続の効力についての見直し
「不動産○○をAさんに相続させる」といった遺言で承継された財産は、法定相続分を超える部分について、登記などの対抗要件を備えなければ第三者(相続債権者など)に対抗することができないこととなります。
8 相続人以外の人の貢献を考慮
相続人以外の親族が、無償で被相続人の療養看護(介護)などをおこなった場合、一定の要件のもとで、相続人に対してお金の支払を請求することができるようになります。
※ これまでは、相続人以外の人は、どれだけ介護をしても相続財産をもらうことができませんでした。
以上、多くの点で改正がされました。施行日は、原則として2019年7月12日までの政令指定日ですが、自筆証書遺言の要件緩和(5)については2019年1月13日、配偶者の居住権については2020年7月12日までの政令指定日とされていますので、注意が必要です。たとえば、2019年1月12日までは、自筆証書遺言は全て自筆で作成しなければなりません。
長くなりましたが、これらの説明は概要にとどまりますので、また改めてそれぞれの制度について記事を書きたいと思います。
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